翌日からは目まぐるしかった。
ワールドに入ると、クランマークはない。
しばらくするとトワさんからWisが入り、Joinする。
その後、二人でTIを狩り歩く。
毎日繰り返される、トワさんの迷走。
その度に、クラン員が減っていく。
ある日、ファインダー先輩が言い出した。
「俺、しばらくPS2のFFにいくわ」
とうとう、二人だけになった。
その日、トワさんが落ち着いた。
単調に、時が過ぎ始めた。
TIの町外れで、トワさんを見つけた。
2匹のドワーフとじゃれている。
「こんにちは」
「あら、ファルクおはよ〜w」
「始めまして、騎士殿^^」
「始めまして、ドワーフ殿^^」
ドワーフに変身した若いプリンスは、ヘロヘロ、と名乗った。
もう一匹は、腹心のWiz、パロムさんだった。
「ファルク君はレベル、いくつ?」
「25です。ヘロヘロさんは?」
「32」
「おぉ、すごい」
「なに、すぐ抜かれるさ。騎士は成長早いから^^。で、ACは?」
「−12です」
「え?それじゃ、痛いだろう。これからはAC下げを心がけるんだね」
「そんなに困っていません」
「今はいいかもね。でも、この先を目指すなら、フルZELは絶対だよ」

しばらく、いろいろ教えてもらう。
ヘロヘロさんたちと別れると、広場に♂エルフがトワさんを待っていた。
「このキャラ、成人式を済ませたぞ〜^^」
「よっし、クランにはいれ〜w」
「これは行き先、決まってるんだよ」
「むー」
エルフはKamiru、と名乗った。眼が何より語る、不思議な魅力を秘めていた。
「じゃ、Venusは?」
「もう、ないw。なんなら、なにか作ろうか?」
「うん」
私はポツリ、と呟いた。
「・・いいな〜」
「ん?なにが?」
「私、トワさんにクランに入って、って言われたことない。」
「だって、ファルクは強制だもの^^」
「(^^」
「ところで、トワ。レベルいくつ?」
「まだ5だよん」
「じゃ、肩書きつけられないね。よし、トワのレベル上げにTICへ行こう〜」
「え〜、だってトワ、装備なんにもないよ」
「私の予備の骨セットがあります」
私が言うと、トワさんが振り向いて笑顔で一言
「貸して^^」
「あい」
倉庫から骨セットのほか、ダマ剣を含めた有り合わせを出してきて、渡す。
その時、別の姫様が声をかけてきた。
「レベル10なんだけど、一緒に行ってもいい?」
「もちろんです〜^^」
女性あしらいの上手さは、Venusさんを思い出させる。
もう1人、レベル21の騎士、飛車丸さんが同行してくれる。
みんなでPT組んで、TICへ潜る。
「今日は2階、なしね^^;」
珍しくトワさんがおとなしい。
代わりにもう1人の姫様が、元気いい。

飛車丸さんとKamiruさんにトワさんをまかせ、私は姫様を追う。
手違いや、偶然での戦闘が起こる。
PTが前後に分かれたため、大急ぎで両姫様の許を往復する。
周囲をオークFが取り巻いている。
慌てて飛び込む。
剣が振り下ろされ、矢が放たれる。
数は少ないものの、魔法も飛ぶ。
気がつくとトワさんと姫様が倒れている。
「やっぱり、無理だったかー^^;」
Kamiruがのんきなことを言っている。
復活スクロールを使う。
トワさんはともかく、もう1人の姫様は、ショックだった様だ。
「私、帰ってもいいかな」
「みんなで帰還しましょう」
用事がある、という飛車丸さんが飛び、姫様が飛んだ(はず)。
私たち3人がTIの町に戻っても、姫様の姿がない。
あちこち探し、声を張り上げたが、見つからない。
「飛んだはず、だよね」
「ランテレ、だったかな?」
「私、TICに戻って見てきます」
「ファルクが行っても見つからないよ」
沈黙
私は、ふと呟く。
「姫様って、みんな特攻なんだ・・」
「ん?私、特攻してないよ」
「今日は、ね(^^」
クスクス笑っていたKamiruが爆笑!
「あんた、笑いすぎ!!」
トワさんのパンチが飛ぶが、Kamiruの笑いは止まらない。

いつからか、傍らに♂Wizが立っていた。
つかつかとトワさんに近づくと、抱きしめた。
3人は呆気を取られた。
♂Wizは何度も抱きしめ、キスを繰りかえす。
「誰?」
「だれでしょ〜^^」
「・・トワの大好きなひと?」
「^^」
♂Wizは私を振り返り、いきなりエネルギーボルトを撃ってきた。
「ほら、見てないでかかっておいで^^」
「私は、人間を殴りません」
「大事な姫様を取られても?」
「トワさんの友達なら、なおさらです」
「・・あんたも素敵だよ」
そう言うと、♂Wizは近づいてきて
ちゅ
「あ」
この香り、ケリーママ!
>「ケリーママですね?」
「誰でしょ〜^^」
♂Wizは笑いながら去っていく。
「ファルクさん、大事な人は、自分で守らなきゃだめよ^^」
>「トワさん、あの人・・」
>「うん、ケリーママだよ・・」
>「やっぱり・・」
私は後姿を見送っていた。
トワさんの眼に立ち上るなにかに、気がつかなかった。

翌日、トワさんから連絡があった。
>「私、トワをしばらく休むよ」
>「どうして?」
>「疲れちゃったから」
>「で、いつまで?」
>「わかんない」
>「・・・」
>「ファルク、明日、ある人を紹介するよ。ファルクがよければ、その人の所に
>預かってもらう」
>「私は、トワさんが元気になるまで、1人でいます」
>「ファルクはもっと、知り合いを増やした方が、いいよ」
そういうと、トワさんは落ちていった。
気がつくと、肩書きが付いていた。
緑色で「221」
なぜか、涙色に思えた。
――― 第一部 完 ――― |