イベントの日々は飛ぶように過ぎていく。
周囲の意識が【勇者の証】に集まる中、私の関心はレベルアップだけにあった。
(トワさんやファインダーさん達と、PT組んでいきたい)
頭にあるのは、それだけだった。
こんな立ち話がきっかけだった。
ある晩、ケントの武器屋の前を通りかかると、Lv40を超えるエルフが元のクラン員
たちと言い争っていた。
Lv40を超える、はクランマークなしにタイトルをつけていたからだ。
エルフは、友情不信から引退を決意していた。
原因は2つ
ひとつはクランのプリンスが、新入の女性キャラと二人でばかり行動すること。
それを諌めるべき副官もまた、クランの和に興味がないこと。
もうひとつは、親友と思っていた人に引退を相談したとたん、「くれくれ君」に
なってしまったこと。
「俺は、クランの誰も、クランを守ろうって気がないのに絶望したんだ。」
「じゃ、あの女たちを追い出せばいいのか?」
「そうじゃない。自分の行動が周りにどんな影響を与えるか、考えないプリと、
それを黙認するお前達に愛想が尽きたんだ。俺がなにか言う度、疎まれるのに
嫌気がさしたんだよ。」
「なら、その鎧、いらないな(^^。)」
「こんなもの、くれてやる!!たかがデータじゃないか!!」
「冗談だよ、怒るなよ」
「あいつも、同じことを言ったよ。引退するなら、要らないだろうってな」
「あんなに親しかったじゃないか」
「あいつは俺の装備と親しかったのさ、俺とじゃなかったんだ」
「まぁ、もう少し話し合おうよ」
「明日、全部の装備を牛にでも入れてやるんだ・・」

詳しい内容は、もちろんわからない。
どうなったかも、知らない。
だが、これは言える。
どんなに好きでも、プリは独占してもされてもいけない。
今、レベルの関係もあって、私はトワさんとしか行動を共にしていない。
この状況を、ファインダー先輩や他の人たちは、どう感じているだろう。
私はトワさんに、クランに甘えすぎていないか?
トワさんを独占せずに、一緒に行動するには・・・。
だれかの、できればファインダー先輩の4レベル以内に追いつくしか、思いつかなかった。
装備の充実もなく、稼ぎは全てPOTに変わった。
ぎりぎりのところで、モンスターと渡り合った。
HPの最後の数値を、先にゼロにした方が、負け。
そんな繰り返しだった。
たまにトワさんと同道する以外は、誰とも組まない。
魔法も弓も使わない。
武器はバーサーカ斧とRKSだけ。
自分と、チール・キグナスだけの肉弾戦。
知り合いはHoichiさん、ケリーママ、トワさん、ファインダー先輩だけ。
寂しいとか、そんなことを感じる余裕もない日々だった。
ある日、ケント〜グル街道の少し東でウェアウルフとぶつかった。最中、ライカン
スロープとウェアウルフのチームが襲い掛かってきた。
太刀打ちできない。
チールの
キグナスの
そして自分のHPが見る見る減っていく。
ランダム・テレポート
出たところは砂漠。
しかも、バジリスク(バジ)とジャイアント・アント・ソルジャー(GAS)の間に
割り込むような着地。
バジのブレスに凍りつく。
GASが噛み付いてくる。
チールとキグナスが当惑している。
「!h」
その一言だけしか、発せられなかった。
すぐ近くにいた女性Wizと、プリンスに率いられたPTがモンスターを引き受けてくれた。
HPは残ったが、完全な敗北。
ウッドベック村(WB)にたどり着いてから、クランに連絡。
結果
独りで砂漠禁止。
私はTIに戻り、以後、買い物以外は引き篭もった。

ある日、全チャでケント城攻城戦がある旨、流れた。
見に行こうか。
狩りに疲れていた。
@「トワさん、攻城戦ですって」
@「全チャ見たよ」
@「見たこと、あります?」
@「あるけど?」
@「私も見に行こうかな」
@「・・ファルク、いまどこ?」
@「TIの広場です」
@「そこにいて」
数瞬後、目の前にトワさんがいた。
目つきが険しい。
「ちょっと、こっちにきて」
町はずれの小屋の裏に連れて行かれる。
「ファルク、戦争、興味あるの?」
「興味っていうか、あの・・」
「人同士が殺しあうんだよ!遊びで大勢が殺しあうのを、あんた、見たいの?」
トワさんが、怒っている。
いろいろ、諭される。
「トワは戦争なんて、しない。ファルクの大事な人が相手陣地にいたら、あんた、
どうする気?」
「・・・」
「どうするの?行くの?」
「・・・行きません」
「うん、それがいいよ」
1呼吸、2呼吸
いつものトワさんに戻った。
私もまた、人間を戦いの相手に思えない自分に気がついていた。

勇者の証イベントもあと2日
集めるともなく集まった、「証」は50個を超えていた。
2日間の休暇の予定を立てて、グルのプライムのところに行った。
さすがに人だかりになっている。
プライムは事務的に50個の「証」を抜き取ると、
「真実と幸運、どっちがいい?」
と指輪を2つ見せた。
真実はいつも、自分の心の中に見出そう。
「・・・幸運」
指輪を受け取ったとき、ファインダー先輩からクラチャが入った。
@「ファルク、調子はどうだい?」
@「Lv19になりました」
@「おぉ、早いな〜。俺は証集めが、もうひとつなんだ。」
@「TI西の森に蜘蛛が戻ってますよ」
@「いなくなっていたのか?」
@「一時、ね(^^」
@「・・・サンキュ、いってみる」
@「私は50個集めたから、終わりにします」
@「そうか、なににした?」
@「幸運リング」
@「・・ファルク、ナイトなら、真実だろ?」
@「そうなんですか?」
@「・・ネットでしらべてみ」
@「はい」
@「まだ時間があるから、真実、狙ってみな」
@「明日、あさっては旅行にいくんです。」
@「そうか・・、まぁいいけどな。情報ありがとう」
クラチャは切れた。

二日間、旅に出た。
が、どうも気にかかるファインダー先輩の一言。
予定より早めに、帰還。
イベント終了5時間前。
勇者の印、手持ち1。
ケント付近を
ケント〜グル街道を
グルの西の森を
飛ぶように駆け抜ける。
と
スライムレース場の北で、Wizと騎士が立ちすくんでいる。
足元に犬が横たわっている。
「犬、逝っちゃったんですか」
「はい、無理させちゃって」
「復活させていい?」
スクロールを紐解く
「ありがとう」
「気をつけて」
それ以上、振り返る余裕は、ない。
時間は過ぎる。
集まり方が停滞してくる。
TIに戻った。
いままで行かなかった、南の森へいく。
人気が、ない。
ウェア、蜘蛛、スケルトン、オーク類
イベント終了、1時間30分前。
50個の証を持ってグルに向かう。
船を待つ余裕はない。
テレポートに1500A払って、瞬間移動。
プライムがなにか言い始める前に、証を押し付ける。
奪うように「真実のリング」を受け取る。
今度こそ、終了。
@マークをつける。
@「ファインダー先輩、真実リングを受け取りました。」
@「え?だって旅行は?」
@「行って来ました」
@「あと9個が出ないんだよ」
@「どこです?」
@「グルの北」
@「TIの南、よく出ました」
@「TI、か。船ないな」
@「あい、行くなら急いで」
@「さんきゅ」
犬を返しにケントへ向かう。
祭りの終わる前の活気が、ある。
1人のWizが声をかけてくる。
「真実リングと、幸運アミュを換えてくれませんか?」
「ごめんね、幸運リングなら、余ってるけど」
「じゃ、幸運リングと真実アミュを換えてください」
私にとっての、イベントが終わった。 |